本当に空目は、何の料理を出しても文句は云わずに食べるし、それが飲み物であっても同じことで。








この際、どうして俺がこうも甲斐甲斐しく空目家の家事を片っ端からやっているのかとかいうことは考えないでおくとして。
















*  お味はいかが?  *
















「美味いか」
「あぁ」
空目が料理を口に運んだのを見計らって、村神はきいた。
夕食をこうして作ってやるのも、初めは数日に一度ぐらいだった。
だが何故かこの頃その頻度が増しに増し、殆ど毎日のように作りに来ている。
空目が作ってくれと頼む訳もなく、だからといって村神も引き止められなければ他人の家にそう留まりはしないので、どうしてこうなったのかはわからない。
村神はたまに考える。
空目は出しただけの料理を本当に全て食べ切ってくれるのかと。
今は、空目の身長体重それに加えて線の細さに合わせて、自分の分に比べると大分少なくしてある。
だがそれを少ないとも多いとも云わない。
これで多いと云われたらどこか病んでいるのではないかという程の量なのだが。
だったら、自分と同じぐらいの量の食事を出してもやはり文句を云わずに食べ切ってくれるのだろうか、とか考えてしまう。
だがそれで胃腸を壊されても困るし、大体そうなったとき面倒を見るのは自分だ。
空目は消化器系が弱そうだ。
あくまで想像だが。
なのに、自分に合っていない量の食事でもそうと気付くことさえなく平らげ、体を壊しそうなのである。
全て想像だし、想像で終わるのに越したことはないが、空目なら有り得そうで怖かった。
オカルトにはやたらめったら詳しいのに、自分の体調管理については多分小学生以下だ。
自分が炊事を放っておいたら、空目は栄養失調で死ぬに違いないと村神は無駄に固く信じていた。
黙々とカロリーの摂取だけを目的とするかのように空目は料理を口に運び、咀嚼し、嚥下するのを繰り返していた。
飽食の国でどうして自分はこんな心配をしているんだ、と思ったら悲しくなって、完成の満足度も高い今日の料理に箸をつけた。
















END




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2005.8.26