「あの、文芸部って、マネージャー募集してたりしないんですか」




部室に響く、ひとりの声。
















* 傍観者 *
















「特に募集はしていない」




目の前に立つ人物を見上げながら、空目は事もなげに云い切った。
大抵の人間は、空目のこの言葉では云い表し難い態度に萎縮してしまうものなのだが、どうやらこの人物はそれをものともしていないようである。
「じゃ、いないんですよね」
「あぁ」
「不自由はしてませんか?」
「特に」
「うーん…」
空目が言葉を短く切って捨ててしまうので、取っ掛かりのような物が見つけられずに少し戸惑ったようだった。
それを遠目に見つめながら、武巳は少年の度胸に感服していた。
彼は、部室のドアをノックして丁寧に開けてから、真っ直ぐ空目のところへ向かったのだ。
手前にはもっと話し掛けやすいであろう、稜子や自分らがいたというのに。
これまでの会話の流れから行くと、この中の誰かと知り合いという訳でもなさそうだった。
自分には絶対出来ない、と思いながら武巳は少年を見守っていた。
出来れば入部してくれたらいいな、という願いも込めて。
「やっぱいらないすか、マネなんて」
「……」
空目が足を組むのをやめて、少年を見上げた。
「特に募集はしていない、そして現状で不自由もないとは云ったが、入るなとはいっていない。入りたかったら入ればいい。そもそも入部に許可を求める必要こそが皆無だ」
「……ぇ…じゃあ入部オーケーすか!?」
ワンテンポ遅れて、少年は反応する。
「これから…よろしくお願いします!」
少年は全員の方へ向き直った。
っていいます。まじ頑張ってマネ業やりますんで!」








とりあえずその日は自己紹介やら説明、質問会やらで部活動の時間は終わりそうだった。
の入部が決まった途端張り詰めていた空気がほぐれ、武巳も稜子もいつもの明るさで振る舞い始めた。
「何て呼んだらいー?」
「好きに呼んで。変なのじゃなかったら大抵許すよ」
「じゃーって呼ぶ」
「うん」
「何で文芸部なの?」
が…俺の友達なんだけど、が美術部でね、同じ部の沖本ってやつに、文芸部が良いぞって薦められたって。勝手に俺がいい部活探してるのを云ったらしい」
「沖本!?」
「知り合い?」
「同室なんだよね、武巳クン」
主に武巳、稜子、を中心に会話は展開され、他のメンバーも輪には加わっているものの、殆ど話を聞いているだけだった。
「村神くん、背大きいねぇ」
だから、急に話をふられたとき、村神の対応もいつもの機敏さを大いに欠いていた。
「え?あ…あぁ」
「いーなァ。俺もあと5センチぐらいはほしかった」
村神の態度は気にせず、は笑った。
笑うと雰囲気が柔らかくなるな、と武巳は思った。
相手の態度や口調の強弱にあまり頓着しないで話すは、むしろそれが壁となって何だかとっつきづらいイメージがあるのだが、笑うと大分印象が変わった。
柔らかいというか丸いというか、触ったらふわふわしてそうな感じだな。
武巳は、笑ったをそう定義づけた。
「あれ、木戸野さん眼鏡は?」
が部室に乗り込んで来たときはかけていた眼鏡は、この自己紹介やらをやるにあたって外したのだった。
亜紀はのんびり口を開く。
「よく見てるね」
「まぁね」
威張ったようには云って、また笑った。
「本読むときだけかけてんの。常時かけてなきゃなんない程悪くはないから」
「ふーん」
大したことではない筈なのだが、は楽しそうに返事をした。
「じゃ陛下ってさ、この部の部長さん?」
は、座っている順に話をふっているようだった。
話し掛けられた空目はいつもの無表情で淡々と答える。
「そういう訳ではない」
「でもは、空目って人が文芸部を取り仕切ってるらしいって云ってたけどなー」
「まぁそこは否定出来ねぇよな」
云って、村神は苦笑した。
「確かに」
武巳も笑った。
「だって、魔王様だもんね」
呼び方からして既に、といった感じで、稜子も笑った。
どういうことかと首でも傾げているんじゃないかと武巳がを見てみると、案外普通な顔をしていた。
「それって、陛下がオバケ退治出来るから?」
「……」
全員が一斉に黙った。
何かまずいことを云ったか、とは今更だが首を傾げる。
「知覚出来るんでしょう?匂いを。十叶先輩に聞いたよ」
追い撃ちをかける一言だった。
一瞬にして空気が変わった。
村神の目には緊張と警戒が浮かび、亜紀にも似たような色が宿っていた。
稜子も武巳は只驚いて、そしてたった今変質してしまった空気に緊張していた。
あやめは空目に擦り寄った。
そして空目は目を細めただけだった。
「十叶先輩、変なところでけちだから、そんなところしか教えてくれなかった。…もう、やだな。中途半端にしか知らないって嫌いだよ。変に警戒心持たれちゃうし」
は勝手に機嫌を損ねたようで、変な顔をして皆の顔を順に窺っていた。
そのを見ているときの空目の表情の変化を、武巳は見てしまった。
空目はの視線に気を遣っていて、武巳が見ていることには気付いていないようだったが。
「お前、あやめが視えるのか」
一同がはっとして空目を見る。
「あやめちゃんていうの、その神隠しさん」
が笑った。
「可愛い名前だね。陛下がつけてあげたの?」
「…何を、しにきた?」
の質問を無視して空目は訊いた。
「だから、マネージャーをしに。俺、こういう体質だから、いらないくらいよく視えちゃってて。生きてるか死んでるかぐらいの区別は一応つくんだけど、なんかいろいろしんどいからさ。…仲間、探してたの」
「体質?」
今度は村神が訊いた。
「陰陽師な家柄なんだ。小さいときの遊び相手は式神だった。凄くない?」
云っては冗談ぽく笑ったが、誰も笑わなかった。
「霊障があればお祓いするし、喉が渇いたらお茶汲みもする。図書館行って調べ物もしてくるし、なにより家が家だからリアルなオカルト知識も豊富だよ。こんなマネージャーそうはいないよ。だからここにいさして下さい」
の目は本気そのものだった。
不意に、武巳が笑い始める。
「…近藤!」
亜紀が制しようとしたが、あまり聞いていないようだった。
「俺らの態度とちぐはぐすぎなんだもん、こいつ…。やばい、どつぼにはまる」
そんなことを云いながら、武巳は尚も笑っていた。
「な…?」
はきょとんとしながら笑う武巳を見ていた。
「……」
平生と変わらぬ空目に視線を遣ってから、村神も肩の力を抜いたようだった。
「別に何でもねぇんだな?」
「力を持っているというだけだ。問題はないだろう」
「俺、只の陰陽師の家の子で、問題児じゃないよ」
「只の陰陽師の家の子…ねぇ」
亜紀も脱力して、息を吐いた。
稜子も武巳につられて笑い出した。
「…変なの。クン面白い人だねぇ」
「うん、よく云われる」
状況を把握しているのかいないかわからない顔では云って、笑った。












「…変な奴、入ったな」
「男なのにマネージャーか」
「村神、このご時世男なのにとか女なのにとか云ってちゃ駄目じゃないか?ジェンダーハラスメントだぜ。それに…」
「?」
急に言葉を切った武巳を訝って、村神は首を傾げた。
武巳が5限目を一緒にさぼらないかというお誘いメールを文芸部一同に送り付けてみたところ、見事にふられまくり、唯一受けてくれた村神と武巳、という珍しい組合せで今部室にいた。
因みに武巳はまだのアドレスを知らない。
「お前、性別がどうのって気にしてたら陛下とは付き合えないだろ」
「……」
村神は硬直した。
言葉も返せないといった風である。
「初々しい奴だな。案外可愛いぞお前」
「…うるせぇ」
ぽつりと返す村神。
そしてすぐ俯いたが、またすぐに顔を上げた。
切り替えの早い奴だな、と武巳は思った。
村神が話をここから逸らせる為に、元の方向に修正しようとするだろうことはなんとなくわかった。
「話が逸れまくったな。それで、は…」
「俺が何?」
「うわッ!?」
名前が出た途端に現れたに、武巳は酷く驚いて思わず椅子から落ちそうになった。
「あはは、驚いてやんの。武巳も村神もこんな時間にこんなとこで何やってんのー」
「…何って、お前こそ」
何とか平静を装った村神が云ってみる。
何しろ今は5限目の真っ最中である。
「武巳と村神が楽しそうにお喋りしてるよって友達に教えてもらったんで来てみた次第です」
まだぎこちない態度の2人にはやはり気付いていないのか、もしくは気付いているが無視しているのか、はひとり楽しそうにしていた。
「誰?」
武巳が訊く。
「武巳は知らない人だよ」
「云ってみなきゃわかんねーじゃん。知ってるかもよ、俺」
「絶対知らない。だってウチから連れて来た式神だもん」
「…………へぇ」
武巳の笑顔が引き攣った。
「そういや云ってたな。小さい頃の遊び相手はその、式神だったって」
「うん。小さいときはホント、生きてる人と死んでる人と、式神でさえ区別ついてなかったから、生きてる友達いなくって」
は内容に合わないような柔らかい笑みを浮かべた。
…」
結構辛い人生を送ってきてそうだな、と村神は思った。
只のへらへらした奴じゃなかったんだな、と。
「それよりね!気になってたことがあるんだけど」
そんな村神の思惑を見事にぶち壊すように、はまた明るい調子で話し出した。
村神はまた、やっぱりこいつはへらへらしてるだけの奴かもしれないと少し思い直してしまった。
お構い無しには武巳と村神の間に座った。
「村神って、陛下と深い仲なの?」
「な…!?」
「結構勘鋭いじゃんって。な、村神?」
「ば…ッ」
馬鹿、という単語すら上手く出ない程に村神は動揺しているようだった。
「…幼稚園のときから一緒だな、あいつとは」
村神はどうにか、空目とは只付き合いが長いだけだという話にしようと、そう云った。
「俺はそういう訳で云ったんじゃなくてね、」
あっさり、は流れを元に戻してしまう。
ご愁傷様、と云いたげに武巳が村神を見ると、村神は武巳を睨んだ。
「陛下と村神からは同じ匂いがするから」
穏やかには云った。
「匂い…?」
云われて村神は、自分のシャツの匂いを嗅いだ。
「あー。そういう、一般に知覚出来る匂いじゃなくてね」
説明しづらそうには苦笑した。
「色っていう言葉を使う人もいるんだけどね。でも気っていうのは実際匂いもしないし色もないし、だからどう区別してんのかって云われると説明に困るんだけどー…」
は暫く視線を泳がせてから、また続ける。
「何か、感じるの。気の流れを感じる気がする。匂いが、村神のと武巳のとじゃ違う気がする。色が違う気がする。そんな気がするってだけ」
「……ふーん」
村神の目には、が空目2号のように見えてきていた。
オカルト知識の云々に関して。
こいつに、魔王陛下のような不思議なニックネームがつくのも時間の問題かとも思えた。
「で!村神と陛下はなんか似てる訳よ、その匂いが」
きた、と思った。
このままオカルトな話に突っ込んでいって帰ってこなければよかったのに、と村神は本気で思っていた。
「えっちすることをさ、気をやるって云うでしょ。ホントに交じっちゃうんだよね、気。少しだけど。特に陛下から村神の匂いしたほうが、村神から陛下の匂いってのより強かったんだけど、それってつまりその……そういうことなんだよね」
が含んだような云い方をすると、村神はいきなり立ち上がった。
云うまでもないが、逃げる為である。
「逃げんなよなー村神ー」
「…離せ!」
そんな村神の服の端を武巳が掴むと、村神が哮えた。
相当恥ずかしいらしい。
それから暫く、村神に対する遠回しで下世話な話が続いたらしい。




















「はぁいお茶です陛下様」
「すまんな」
「ついでに聞きますが村神は紅茶には砂糖とミルクとどうしたらいいんですか」
「ミルクは抜きで砂糖は少し。だったな、村神?」
「遊んでるんだよな、…?」


空目に話をふられた村神は乱暴に本を閉じた。
それを見てはにっこり笑む。
が入部してから数週間経っていた。
その間には、村神の遊び方を学び、空目が無意識にたまにぼけることを知り、稜子が好きな恋愛話の傾向に気付き、あやめが極度の人見知りをするせいか未だにまともに話したことがなかったり、亜紀の毒舌も結構悪くないかなと思い、そして武巳とが一番気が合うことを確信した。
「怒られてしまいました、武巳さん」
「いい加減からかうのやめてやったらどうですかね、さん」
投げやりに武巳が返すと、は頬を膨らませた。
「それが簡単にやめられたら苦労はないよねぇ」
云って、は誰もいないほうへ話をふった。
いや、いないのではなくこの場にいる人間には見えていないのだ。
空目があやめを連れているのと同様、もまた式神を連れている。
それは神隠しではないので、いると意識しても見ることが出来ないだけで。
という説明をいつだったか、空目から聞いていた。
はオカルトに関しては博識だったのだが、いかんせん説明下手だった。
というか、口下手なのだ。
話し慣れていない、という言葉のほうがしっくりくるのかもしれない。
「何だって?」
「やっぱやめろってさ。それに謝れって云われちゃった」
武巳の質問にそう答えると、は舌をべっと出した。
「ごめんね、村神」
皆に式神の声は聞こえなかった。
何を話しているかはわからなかったが、それでもが式神の云っていることにはやたら従っているらしいことはわかった。
服従とは違う、自主的なもので。
「あ、いや……あぁ」
こうも素直に謝られると、村神は何も云えなかった。
クンさぁ、なんで式神さんにはそんな素直に云うこと聞くの?」
「こいつは、…お母さんがモデルだから」
云いたいことは半分ぐらいしかわからなかったが、稜子はそれ以上は聞こうとはしなかった。
「じゃーなんで名前ないの?」
これは武巳である。
「名前で縛っちゃ駄目でしょ。だから」
やはりよくわからない。
「もうちょっと言葉付け足してくんないとわかんないんだけど…」
「名前を付けるっていうのは、呪いをかけるのと同じなんだよ。例えば俺。俺にはって呪いがかけられてるから、俺っていう個性があって、こんな顔しててー…」
「でも名前付けるのって、生まれた後だろ」
「そこが難しいんだよねぇ。説明が。武巳数V得意?」
「いや全く…」
「じゃあ聞かないほうがいいと思う。俺の貧困な語彙じゃとてもじゃないけど正確な意思疎通が出来るとは思えないし、中途半端に知っちゃうと余計わからなくなるでしょ」
それはそうなのだが、それと数Vが一体何処で繋がっているんだかわからなくて武巳は首を傾げた。
「陛下に聞いたほうがわかるかも」
「あ、そうか」
「…恭の字なら出て行ったよ。村神と」
誰が考えても最善だと思える案がやっと出てきたところで、亜紀が口を挟んだ。
「…最善の案に逃げられた!」
「は…?」
がさも悔しそうに云い放つと、武巳は何を云ってるんだこいつ、という目で見た。
は続ける。
「探しに行こう」
「いや…後でも別にいいし」
「じゃあ日下部、陛下がここに帰って来たら引き止めといてね。で、メールちょうだい」
武巳の言葉は無視して、は武巳の服の端を掴んで立ち上がった。
そして、稜子にこのことを頼んだらもう、ここにいる道理もないといった感じで、稜子の返事を聞く前に武巳を引っ張ってずんずん行ってしまった
「俺!続き気になってる本あるんだけどー!?」
「こないだから読んでる本?」
「そう!」
「それなら俺読んだ。続きは俺が教えたげるからおいで!」
「いーやーだー…!」
そんな会話が、どんどん部室から遠ざかっていくのを稜子と亜紀は聞いたそうだ。
そして言葉では拒否を示してはいるが、何だかに振り回されるのも満更ではないだろう武巳がいることも、2人は知っていた。












「デートとかしてたらどーすんだよー」
「陛下と村神?」
「そう!」
「だったら尚良し。デバガメ致します!さァ探しておいで」
武巳がいるのとは逆のほうを向いて、は式神に云った。
そしては武巳のほうへ向き直る。
「俺、武巳のこと好きだよ」
武巳は立ち止まった。
「…み、」
「み?」
は首を傾げた。
「脈絡、なさすぎないか…」
はぁ、と溜息をついて武巳は笑った。
「そうかな?」
つられても笑う。
「俺だって好きだよ。お前なんか面白いし、一緒にいて飽きねぇし」
「…」
の表情が消えた。
「…?」
「武巳わかってない」
「ん?」
「身の上話を聞いて」
話がいきなり飛躍した。
だがこれにも、武巳は慣れてきていた。
の話はいきなり突飛な方向に進むが、最後まで聞いているとたいてい本筋からそんなに掛け離れていなかったりするのだ。
だが横槍が入ったり話の腰があまりにも折られてしまうと、たまに本題を忘れ、訳のわからない方向に突っ走ったまま帰ってこなくなる。
の話は最後まで静かに聞かなければいけないということを武巳はこの数週間で学んだ。
それでもそれが苦だと思ったことはなかった。
それは話が面白いせいだろうと武巳は思っていたが、こんなぎこちない話のどこがと思えるときもあった。
そんなことが幾度とあっても、の話を聞くのはやはり好きだった。
「…俺ね、小さいときは生きてる人間の友達いなかったって云ったでしょ。中学生ぐらいになって、やっとこういうチカラ隠して生活出来るようになって。でもあんまり友達は多くなかったかな。こんな力抜きにしても変な奴でしょ、俺。知ってることだって半分以上がオカルトだから普通の話題についていけなくて」
「…」
武巳の顔色を窺っている訳でもなさそうだが、は武巳の顔を見てからまた続けた。
「大分慣れたし、友達も上手く作れるようにはなったんだけどね。でも、未だに人との距離の詰め方がよくわからない。人を好きになるって、どういうことか感覚的にはわかってるけど多分普通の人とは悩むとこ違うと思うし」
は続ける。
「云ったよね。俺にはって云う呪いがかかってるって」
「あの例え話だろ?」
「例えだけど本当の話。名前と同じで言葉も呪いになるんだよ?」
「…?」
「俺がお前を殺したいからその為に呪いをかけると宣言するとする。そしたらお前はきっと暗示にかかって死ぬ。俺が上手くやったらの話だけど。それに呪いにも幾つか種類があって、能力や霊力、異界とのコンタクトも全て無視して出来るのがこれね。そんで下手したら警察に捕まるのもこれ。極めて物理的な呪いなんだよね」
武巳は呆然としていた。
恋愛と呪殺の話が混同するとは未知の体験である。
経験したいと思ったことは今まで一度もなかったが。
「好きも殺すも一緒なんだよ。自分からの意思で相手をどうこうしたいっていう思いがあって、えーと…変な話なんだけどね」
それは先程からわかっている、と云おうと思ったがとりあえずやめておいた。
「好きという宣言が、相手に呪いをかけることになる。あ、今更だけど我が家は呪いが専門なの。かけるのも解くのもどっちも」
「…ふーん」
「さっきは勘違いしてたみたいだけど、俺は恋愛の意味で武巳に好きって云ったんだよ」
「……」
やっと結末が見えて、だけれど武巳には返す言葉が見つからなくて、黙るしかなかった。
武巳がそうしていると、はまた口を開いた。
「性別なんか関係ないんだってわかったのは、陛下と村神がいたから。あの2人みたいに、俺も武巳となれたらなって思ったんだ」
「…、」
「…気持ち悪いって、思った?只傍から見てるだけならいいけど、自分がそうなるのは嫌?」
そう云って笑ったに、武巳は一歩歩み寄った。

「…ん?」
武巳が頭を垂れる。
「ここは…、文芸部は変な奴ばっかだから、偏見なんかとうの昔に吹っ飛んでる。だから、男だからとか、凄い家柄だとか、…変な云い方になるけど、はっきり云うとどうでもいいんだ」
「…うん」
ぱっと武巳は顔を上げる。
「……そんでさ、お前俺を好きだって云って、どうしたいの?付き合うとか?」
「……え?」
は拍子抜けした。
その先など考えていなかったといえばそうなのだが、出来ることならコイビト達が普通するであろうことはしたいと思っていた。
「そうだね…、うん。デートしたりとかしたい」
「…随分とあっけらかんと」
「云ったでしょ。俺語彙が貧困なの」
「そうだったな」
武巳が笑った。
もつられて笑ってみる。
。俺もお前のこと好きだよ」
云って、武巳はの手を握った。
そして歩き出す。
も引っ張られるように歩き出した。
「ほ…本当に!?」
「本当に」
「で、でも俺、告白なんかしたの初めてだよ…」
「どういう理屈だ。初めてって失敗する訳?」
「だって初めてだし…」
武巳は笑った。
「変な奴」
「うん。よく、云われる」
「なんか、こういうやり取り前に見たなァ」
「うん、俺もそう思う…」
よくわからない会話を続けながら、2人はずんずん進んでいた。
にはその行き先がわからない。
「それよかさァ、もしかして式神、今の聞いてたり?」
「ううん、陛下達探しに行ったきりまだ帰ってこないから…もしかしたらあやめちゃん見つけて、話とかしてるのかも。あやめちゃんには見えてるらしいからさ、あいつ。それか、」
「まだ陛下探してるのかもな」
「うん」
の言葉を継いで云うと、武巳はのほうを振り返った。
「……どこ行くの?」
「別に」
「え?」
は首を傾げる。
「どこでもいいよ。……デートしよう」
「陛下とかみたいに?」
「そ。陛下とかみたいに」
それを聞いてにっこりと笑ったを見て、武巳も笑った。
俺はこの笑顔が好きなんだろうな、と思った。
「デートだったら、どこでもなんてやだよ」
「でもここ学校の敷地内だしな。行くとこ結構限られてる」
「武巳のお気に入りの場所連れてってー」
「お気に入りぃ?……んー…食堂?部室?」
「じゃ、部室がいいー」
2人きりにはなれないけど、でもやっぱり部室が好きだ、ということになって、2人は方向転換した。
「あ。もうこんな時間じゃんー。お茶の時間。亜紀ちゃん、意外とお茶楽しみにしてくれてる気がするんだよね」
「木戸野が?……意外」
「でしょ。でもその意外さが可愛い」
「気の多い奴だなー」
「本命は武巳!」
「はいはい」
冗談ぽく返事をして、2人はまた笑った。
どうしよう、と思うくらい楽しくやっていけたらいいなと武巳は思った。




















END




****************
なんだこれーと本当に思った。大爆
無駄に長いし訳わかんないしどうしたらいいんだか…。
名前の話をもうちょっとちゃんとしたかったけど、そしたら只のインテリ小説になる、と思って省いたら、只の意味不明文になっただけでした…。




2005.8.4